◆死者をも加えた家族の物語なのではないだろうか
「ママ終わったの?」「ママ終わっちゃったの?」
死の概念がわからない海に、「死んでも、終わってはないない」と夏は答える。
すかさず海は「夏君、海のパパでしょう? 夏君のパパ いつはじまるの?」と尋ねた。
冒頭、水希が「海(sea)がどこから始まってるか知りたいの?」「終わりはないね ずーっと海で」と海(娘)に語っていた。
境界のわからない海のはじまりと終わりと死のはじまりと終わりはどこか似ている。死とはどこからが死なのか。ほら、よく、人は忘れられたときが本当の死だというではないか。
水希の肉体は死んでも、夏に海を託し、心は死なず、思い出も死なず、永遠に生きる。
『海のはじまり』とは、死者をも加えた家族の物語なのではないだろうか。