◆姉の壮絶人生に対し、弟は……

自分の姉であり、一条天皇の母である詮子。「道長もついに血を流すときがきたということよ」と彰子の入内に賛成する。

これまで道長は自分の手を汚すことなく、運よく今の地位を手に入れたと言う彰子。いや、そんなことは……と思ったけれど、確かにそうだ……。そもそも道長本人が自分の手を汚してまで地位を得たいと思っているタイプではないのだから。

ここでの詮子のセリフが強烈だ。

「私は父に裏切られ帝の寵愛を失い息子を中宮に奪われ、兄上に内裏を追われ、失い尽くしながら生きてきた」

なんと凄まじい人生なのか。詮子の人生を考えれば、道長はまだまだ……という話である。

道長は姉にそんなふうに見られていたのかとちょっとしょげるが、大事な弟だからちゃんと見ていたのだとフォローするところも姉らしさ、かもしれない。

NHK『光る君へ』第26回
しかし、彰子の入内は内々の話の時点でなかなか進まない。倫子(黒木華)が反対しているのだ。入内すれば彰子は不幸になる。大事に育てた娘をどうして、と表情を歪ませる倫子に「これはいけにえだ。手塩にかけた尊い娘ならばこそ、値打ちがある」と道長。

娘を入内させるとなると、自分が権力を得るため、と思ってしまうが、道長が優先しているのはあくまで「国のため」「都のため」だ。その気持ちがやがて倫子を動かすこととなる。

もしかして、道長はずっと国を第一に、自分の地位のことは二の次、三の次で……というスタンスを守り続けるのだろうか。逆に、望んで今の地位に就いたわけではないから、そんなふうに欲がない状態でいられるのかもしれない。