◆演じ分けていますという大仰さがなく、どこか自然体

交番勤務の警察官として地域の人々に頼りにされる多家良は、実は詐欺師の顔を持っていた。かつては捜査二課の刑事だった多家良は、法の手では裁けなかった悪を詐欺によって裁いていたのだ。

人の良さそうな警官の顔と、詐欺師の顔、そしてそういう行動をとる本心とを、演じ分ける向井。だが、いかにも演じ分けていますという大仰さがなくどこか自然体で暑苦しくない。

彼なりのやり方で仕事を続けているところが実に尊い。

<文/木俣冬>

【木俣冬】

フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など。Twitter:@kamitonami