◆調味料づくりやお酒の語りはいくらでも聞いていられる気がする
前述の『あさイチ』で、凝っている調味料づくりやお酒の話などをものすごく饒舌(じょうぜつ)に語っていた。
生活が充実しているということはとても良いことだ。知識や情報の開陳の分量が長い人はたいていやや敬遠されがちだが、向井の話し方は決して自慢げでなく、ソフトで、いくらでも聞いていられる気がする。この語り芸を磨くと、もっと年をとったとき、社会問題や昔のことを伝えていくような大人の朗読劇などにハマるのではないかという気がする。
思い返せば、向井がPARCO劇場で主演した『悼む人』(12年)も、亡くなった方のことを、近しい人から話を聞いて悼むという話で、『ウーマン~』も忌まわしい過去を誰かに語り聞かせて葬り去りたいという話だ。感情に溺れることなく、伝えたいこと、言葉の意味をちゃんと届けることに向いている俳優なのである。