保釈後、代理人の弘中惇一郎弁護士から「これまで人質司法そのものを争う裁判はなかったが、戦いますか」と聞かれ、即座にやると答えた。贈収賄容疑に関しては別で争う。
この裁判に期待がかかるのは、錚々たる弁護団の顔ぶれだ。

“無罪請負人”といわれる弘中をはじめ、袴田事件で袴田巌は無罪の可能性が高いと再審が再開された時の裁判長だった村山浩昭弁護士、NPO法人「監獄人権センター」を設立し、国際人権法にも詳しい海渡雄一弁護士、憲法の専門家である伊藤真弁護士などを組織し、人質司法が憲法や国際人権法に照らしてどれほど人権を侵害しているかを問う、わが国初の国を相手取った訴訟である。

 根腐れしているこの国の刑事司法を根底から変える裁判になるかもしれない。

 私は角川の東京五輪汚職での贈賄容疑を無罪だといっているわけではない。角川も、それとこれとは別だといい切っている。

 国を相手にした裁判は間違いなく最高裁判所まで行くからカネと時間がかかる。ゴーンや角川のような潤沢な資金のある人間でなくてはできないのだ。

 この画期的な裁判に不可欠なのはメディアの援護である。だが、検察や警察の番犬に成り下がってしまった週刊誌をのぞくメディアは、今回の画期的な裁判にも冷淡なように見える。

 角川はこの問題を長年放置してきたメディアの責任も問うている。

「人質司法は、強大な力を持つ検察が主導しながら警察・検察・拘置所・裁判所・メディアが一体となって維持されている『システム』なのだ」

 私が今読んでいる貴志祐介の『兎は薄氷に駆ける』(毎日新聞出版)は、この人質司法がテーマである。

 現代ビジネス(2024.07.03)で角川歴彦と貴志祐介がこの問題について論じている。

 角川歴彦はこう切り出す。

《冤罪(えんざい)事件を描く貴志さんの最新刊『兎は薄氷に駆ける』は、現実と深くリンクした、国家権力に対する「告発小説」だと僕は見ています。》

《冤罪事件を描くこのリアルな作品は、東京地検特捜部に逮捕され、東京拘置所で226日間を過ごした僕にとって他人事とは思えませんでした。》

(貴志祐介の著書の書名にある)《「兎」(ウサギ)という文字に「冖」をつけると「冤罪」の「冤」の字になるわけです。この禍々(まがまが)しい文字は、自分より強い力をもった者(検察官)に密室に閉じこめられ、ブルブル震えているウサギ(冤罪被害者)の姿を彷彿(ほうふつ)とさせます。》

 これに対して、貴志祐介はこう返す。

《「冤」という漢字は「冤罪」以外に使う機会がないのです。》

《角川さんをはじめとする多くの被告人は延々と長期勾留されています。カルロス・ゴーンみたいにプライベートジェット機の荷物の中に隠れて国外逃亡するなんて芸当は、後にも先にも彼以外にできないでしょう。被告人が海外逃亡するなんておよそありえないのに、延々と長期勾留する「人質司法」は問題です。》

 さらに、角川歴彦は「メディアによる人民裁判」だと応じる。

《まだ初公判も始まっていないというのに「角川歴彦元会長はワンマン経営だった」とか「コンプライアンスとガバナンスに問題があった」とか、検察からリークされるとおり書いてあるのです。同じ新聞なのに、1日ごとにこんなに立場が変わるものかと驚きました。「自分は今、メディアによって人民裁判を受けているんだな」と思ったものですよ。》(【文徒】2024年7月5日から引用)

 人質司法をなくさない限り、この国は国際刑事司法の観点から見ても最低の国である。この裁判はある意味、憲法改正と同じように最重要な裁判だと思う。もう傍観は許されない。

(文中敬称略)

【巻末付録】

 今週はポストだけ。

「エロすごい水着グランプリ」「金松季歩 全裸で会いたかった」「高橋凛 やわ肌、光る」「ドラマチックな主艶女優 杉本有美」。この中では杉本がいいな!