今週の第1位は、自らも「人質司法」を体験した角川歴彦KADOKAWA元会長(80)が、これは憲法違反であり、有罪が確定するまでは推定無罪であるべきなのに守られていないと、国を訴えたことを取り上げた文春の記事に贈りたい。
私も多くの冤罪を生み出してきた元凶「人質司法」は検察による“犯罪”と考えている。

 最近では、生物兵器の製造に転用可能な噴霧乾燥機を経産省の許可をとらずに輸出したとして化学機械メーカー「大川原化工機」の幹部3人が逮捕されたケースがあった。否認する3人を11か月もの間拘留し続け、そのうちの一人相嶋静夫は深刻な胃癌で外部の病院で治療することを訴えたが、保釈請求は却下され、その後亡くなってしまった。享年72。

 しかも、これが違法捜査だったことが判明、検察は起訴を取り下げたのである。

 その前には、金融商品取引法違反容疑で逮捕された日産自動車前会長カルロス・ゴーンが、108日間身柄を拘束され“娑婆に出た”後、人質司法を痛烈に批判したことで、国際的な関心が集まった。

 だが、ゴーンが海外に逃亡してしまったことで、残念ながらそれ以上には広がらなかった。

 この国の検察や警察は、いったん逮捕すると「推定無罪」や憲法で保障されている「基本的人権」など無視して、弁護士も立ち合いさせず孤立させ、長時間の尋問を強要。狭い部屋に押し込め24時間監視しながら、自白を迫るのである。

 弁護士立会いを認めていない国は北朝鮮と中国だけだそうだ。この国の刑事司法は世界最低レベルということだ。

 相手が高齢でも深刻な病気持ちでも容赦はしない。保釈申請を何度出しても、検察のいいなりの裁判所はこれを認めない。

 追い詰められ精魂尽き果てた被疑者は、検察側の作文である自白調書に拇印を押してしまう。なかには失意の末に拘置所内で死を選ぶ者もいる。

 最近は取り調べの可視化が義務付けられるようになったから、そんな馬鹿なことは行われないという声がある。

 だが、可視化を義務付けているのは裁判員裁判対象事件などで2~3%程度だといわれる。それに検察はビデオの“改竄”などお手の物である。

 角川は東京五輪のスポンサー選定を巡って五輪組織委の高橋治之に賄賂を渡した容疑で逮捕されたが、過酷な取り調べにも屈せず容疑を否認し続けた。重い心臓の病があり何度も倒れたが、保釈が認められたのは226日後だった。

 角川は文春でこう話している。

 何とか出られないかと拘置所の医務室で漏らした時、医者から「死なないとここから出られません」と吐き捨てるようにいわれたという。