◆戦中ポップスを代表するナンバー

 流れてきたのは、1933年にリリースされた「別れのブルース」。周りの人たちは「辛気臭い」というが、スズ子は「ビリビリきた」と心の中で熱いものをその歌声から感じる。

 スズ子が同曲を耳にしたのは1937年という設定。盧溝橋事件に端を発して日中戦争が勃発した年である。淡谷を代表する「別れのブルース」は、実はリリース当初はまったくヒットしなかった。戦中の雰囲気には合わず、日本国民からもレコード会社からも日本風ブルースは理解されなかったよう。

 作曲は服部良一。ドラマ内では羽鳥善一として草彅剛が演じる。「別れのブルース」に「ビリビリきた」スズ子は、羽鳥の薫陶を受け、10年後の1947年にリリースされる「東京ブギウギ」で戦後最大のスター歌手になった。

 一方、「別れのブルース」は、満州で演奏していたジャズトランペッターが取り上げたことで再評価され、同曲は結果的に大ヒットし、日本の戦中ポップスを代表するナンバーとなる。