◆ねっとり強烈なブルースの女王

「淡谷のり子の世界~別れのブルース~」(コロムビア・マーケティング)
「淡谷のり子の世界~別れのブルース~」(コロムビア・マーケティング)
 朝ドラ『ブギウギ』のモデルは戦後を代表する稀代の歌い手、笠置シズ子だった。趣里扮する福来スズ子のブギの女王感にばかり気を取られながらも、もうひとり、ブルースの女王も忘れずにとしきりに思いながら筆者は本作を見ていた。

「買物ブギー」のあの早口言葉みたいな歌い方は、今でこそクセ強最強の桑田佳祐的な歌い回しの元祖といってもいいのだが、笠置のライバルとして登場するブルースの女王、淡谷のり子は、ねっとり強烈な人だ。

 1990年代あたりの晩年の映像を見ると、紫髪にごっついメガネをかけた淡谷の出で立ちと毒舌に震えあがる。淡谷のモノマネを得意のレパートリーにしていたコロッケですら、全然誇張なしに思えるくらい、ほんとに強烈。

 そんな淡谷をモデルとするのが茨田りつ子(菊地凛子)。第5週第23回では、梅丸少女歌劇団の看板歌手としてキャリアを積みながらもタップダンスで目を引く秋山美月(伊原六花)の引き立て役じゃないかともやもやするスズ子が、ラジオであの名曲を耳にする場面が秀逸だった。