夏くんは普通に善人だし、別に大学時代に水季に不義理をしたわけじゃない。そりゃ避妊には失敗したけど、水季が堕ろすっていうから中絶同意書にもサインしたし、別れたのだって水季が一方的に電話で「夏くんより好きな人ができた」って告げてきたからでした。

 そんな夏くんに、このドラマはとことん冷淡なんです。

 まず、仕事を何してるか描かないんですね。28歳の社会人にとって生活の大半は仕事であって、その人物紹介をするときに属性としての仕事を描くのが脚本を書く上での常套手段です。年上彼女の弥生さんは化粧品メーカーでバリキャリをやってる。それ一発で人物像を理解させているわけですが、夏くんは「スーツで電車通勤している」という情報こそ与えるものの、なんの仕事をしているかは描かれない。職場で2人産休に入る人が出て夏休みが確定できないという、どうやらあんまり決裁権がなさそうだということしかわからない。

 主人公に社会的属性を与えず、ただ「バリキャリ女のボンクラ年下彼氏」という記号だけをあてがっている。これって、ドラマからの「夏くんはあなたでもある」というメッセージだと思うんですよね。そういうメッセージを発した上で、夏くんを“災難”に巻き込んでいく。