◆自分の中で反芻したい“温かな言葉”が山盛りの本

――本書について、どんな感想を持ちましたか?

あらい:私自身、1年半ほど前からトラウマ治療を受けているのですが「自分の中で反芻したい」と感じる温かな言葉が山盛りの本でした……! あっという間に読破してしまいました。

情報のバランスがよく、トラウマ治療に興味を持っている人が知りたいことが詰まっています。例えば、治療に漢方薬が用いられることが紹介されているところです。精神科で処方される薬に対して怖いイメージを持っている人は多いかもしれないですが、「漢方だったら試してみようかな」と思える人もいるのではないでしょうか。

また、治療を始める前は、先が見えない不安があるのですが、この本を読むことで何となく“ゴール”や“区切り”をイメージができるところもいいですね。治療中はつらい過去を思い出す中で、苦しくて逃げ出したい気持ちになることがあります。私自身、治療の効果をまだ感じられない段階に「どうせ治療しても苦しいなら、何もせずに鬱々と暮らしていればよかった」と思ってしまうつらい時期がありました。それは、治療の終わりが見えないことが一因だったと思います。

この本では、ハナは人が変わったように劇的にハッピーになるわけではないけど、いろいろなことに気づき、自分の人生を生きる覚悟が決まるような気持ちになって、“静かに”治療が終わっていくという1つのケースが書かれています。この“静かに”というのがまさに私自身が体験したことでした。治療が終わっていくところが見えるのは、当事者にとって希望になると思います。

――エピソード部分はハナの治療の様子が医師との会話形式で描かれていますが、この点についてはどう思いましたか?

あらい:他人がカウンセリングを受けているところは滅多に見ることができないので、この本を読んで、「カウンセリングってこういう感じでいいんだ」と感じられるのではないかと思います。