◆周明の思いはいかに
動揺しているまひろの元には周明も訪れる。
「早くまひろと宋に行きたい」。
早く宋に行くために、朝廷が宋との交易を受け入れるよう、左大臣に手紙を書いてほしい、と。
ふたりで宋に行くためだ、と言い、まひろを抱き寄せ、口づけをしようとする周明だが、まひろはその唇を手で覆う。
そして、「あなたは私を利用するために嘘をついている」と。
周明はまひろを脅して文を書かせようとする。が、まひろは拒む。書かないなら、お前を殺して私も死ぬ、と言う周明にまひろは強い視線を向ける。母が目の前で死んだ。友も虫けらのようになぶり殺された。周明は海に捨てられ、どうにか生き抜いた。なら、簡単に死ぬなどと言わないで、と。
周明は「宋の国はお前が夢に描いているような国ではない」と言う。しかし、それ以上、まひろに文を書くことを強制しなかった。
どうやら、心を奪われていたのは周明のようだ。周明は朱仁聡(浩歌)に、まひろに対しては松原客館を出ていったことにしてほしい、と言っていたが、それは実は嘘だった。
まひろの心の中に入ることができなかったと周明は詫びるが、朱はわずかに微笑む。
「お前の心の中からも、消え去るとよいな」
大人たちは若者の心の中をお見通しなのかもしれない。