■総じて“ごっこ感”だった

『イップス』というドラマは、ミステリーとしての謎解きの出来にバラつきがあるということはずっと書いてきました。3人の脚本家がいて、森ハヤシさんの担当回だけ突出して出来がいい。逆に言うと、森さん以外の2人の担当回は、謎解きを楽しもうと思ったらちょっと見てらんないくらいの出来でした。

 第1話ではトリンドル玲奈が誰にも見られずに7.5トンの純水を薬局からサウナ施設の屋上に運んだことになっていた。第2話では、被害者が酒に酔ってゲロを吐くタイミングを犯人側が完全に予見していたかのようなトリックだった。トリックの甘さは枚挙にいとまがないし、計画殺人と衝動殺人の区別もついてない。司法制度や裁判のシステムについても誤解や強引な踏み抜きがある。

 なんかね、本当にこういう言い方はしたくないんだけど、大人たちが寄ってたかって「ミステリーごっこ」をしていたように見えていたんです。プロ野球だと思ってテレビをつけたら、草野球をやってる。いかにも不器用なゲッツーを取って、まるで自分たちが荒木と井端である、みたいな顔をしている。そんな感じ。