なぜ、慧くんが姉の小説である『歪な十字架』を模倣した殺人を犯しているのか。最終回にきて、倒叙型でありながら「ホワイダニット(Why done it)」に切り替えてきた。このドラマは倒叙なんだよな、と思って見ていた視聴者に、まずそういう錯誤を与えます。同じ倒叙でも、ハウからホワイに変えてきた。オシャレじゃん。

 その後、これまで倒叙だったことをフリにして、別に真犯人を用意している。慧くん、やっぱ殺してなかった。森野も、最初からそれはわかってた。

 真犯人は、いつも森野とバディを組んでいた部下の刑事・樋口(矢本悠馬)でした。

 いわゆる、ミステリー用語でいうところの「犯人は近くにいる」というやつだ。オシャレだ。

 そしてその動機も、独特なものでした。説得力がありながら、慧くんならずとも思わず「狂ってる……」と言いたくなる身勝手な動機。

「狂ってる……」って、言いたいよなぁ。そんな理由で人を殺すなんて。言いたいんですよ。90年代の下北沢カルチャー周辺をウロウロして人間なら、「犯人は近くにいる」をやりたくなる。殺人の動機に「狂ってる……」って言いたくなる。そういう世界観、めちゃくちゃわかる。

 オークラさん、それはわかるんだ。