◆「新しい石原さとみを届けるギャンブル」は完全に成功
当初の脚本における主人公は石原さとみを想定していたわけではなかったそうだが、それでも吉田監督は逆オファーから3年後に石原さとみへ「脚本を書いた」と連絡し、妊娠と出産を待って撮影をするなど、「石原さとみのため」の映画作りへと、途中から完全に舵を切っていたともいえる。
吉田監督は「新しい本で、石原さんをこっちの世界に引きずり込めないかなというある種のギャンブルというか。一緒に努力して、みんなが知っている石原さとみさんじゃないものを作るという自信はありました」とも完成披露試写会で語っていたのだが、その賭けは完全に成功したと言っていい。
実際の劇中では「港区臭」が皆無で、見る影もないどころか、吉田監督だけでなく観客にも「壊れた」のではないかと思わせ、石原さとみというその人のメンタルを心配させるほどの、まったく新しい石原さとみの姿がそこにあったのだから。「シャンプーではなくボディソープを使って傷めた髪」からも、そう思えるだろう。