◆撮影現場での本人と劇中の役柄が「つながっている」

『ミッシング』
 さらに、吉田監督は6年前に石原さとみと出会ったときは「自分の意志をはっきりと言うタイプで、自信がみなぎっている人」という印象を持ったが、撮影現場に現れた石原さとみに対しては「弱りきって迷走した状態」かつ「自信の欠片もない、ただ勢いだけはあるから、すごく沙織里(主人公)っぽかった」と思ったのだとか。

 もはや、どこまでが石原さとみの俳優としての力なのか、それとも撮影現場で見せた「素」の状態なのかも判然とはしないが、間違いなく言えるのは、石原さとみの俳優としての挑戦が、演じる役柄とシンクロしているということだ。

 熱烈に役を希望する勢いを持ち続けているはずなのに、撮影現場では自信の欠片もないように見えたという石原さとみ。娘の失踪に世間の関心が薄れつつあるため、弱り切ると同時に常軌を逸した言動も取ってしまう劇中の主人公。それぞれが「つながっている」からこそ、「本当に壊れた」と思わせるほどのリアリズムを体現したのではないだろうか。