■メンターとしての和久井映見
初回でハルト(眞栄田郷敦)が頭を打って記憶を失って以来、その主治医である池沢先生(和久井映見)が常に正解を与えてくるというのが、このドラマの構造でした。
みんな、ハルトが記憶を失ってどうしたらいいかわからない。ハルトも、徐々に社会生活に復帰しながら、どうしたらいいかわからない。そこに池沢先生が何か一言、言葉を与えることで次に進んでいくというパターンが繰り返されました。
そんな池沢先生が、記憶が戻ったハルトに今回こんなことを言うんです。
「(昔の自分に)戻る必要、あるのかな。過去よりも、今じゃない?」
全11話にわたって、ずっと、徹頭徹尾「あのころはよかった、あのころに戻りたい」と言い続けてきたドラマの最終回で、こういうことを言う。見ている側に「池沢先生はいつも正しい」という印象を植え付けておいて、本来なら主人公たちが自らさまざまな出来事を経てたどり着かなければいけない思考を、たやすく与えてしまう。