◆西島秀俊と青木崇高との会話も重要

『蛇の道』
 さらに劇中で重要になるのは、患者役の西島秀俊との日本語での会話だ。劇中の西島秀俊からぶつけられた疑問は不遜極まりないものだったため、柴咲コウは「困った人ですね」などと当たり前かつ冷静な返答をするのだが、その疑問が「図星」のようで、少なからず動揺しているようにも思える、それでこそ彼女のキャラクターが浮き彫りになるところがあったのだ。

 さらには、劇中で柴咲コウは、リモートで日本にいる夫役の青木崇高とも日本語で話し合っている。現在公開中の『ミッシング』と同様に、どこにでもいる「普通の夫」に見える青木崇高との会話は、ほのぼのとしているように見えるのだが……どこか「本心を隠して話している」印象を与える柴咲コウの表情が、やはり怖く思えるのだ。

 そして、その柴咲コウに真に戦慄できたのは、黒沢清監督らしい「影」の演出も際立ったクライマックスと、それに続くラストシーンだった。見る人によって解釈が異なり、「彼女って実は……」と劇中で明確に描かれていないことにも想像が及ぶからこそ、さらにゾッとできるだろう。それも含めて「柴咲コウ史上最恐」を期待してほしい。

<文/ヒナタカ>

【ヒナタカ】

WEB媒体「All About ニュース」「ねとらぼ」「CINEMAS+」、紙媒体『月刊総務』などで記事を執筆中の映画ライター。Xアカウント:@HinatakaJeF