◆「何を考えているのかわからない」役の奥深さと恐ろしさ
その柴咲コウは、フランス語への挑戦以外でも、「何を考えているのか分からない小夜子(心療内科医医)を、物語の進行とともに垣間見られる彼女の本心の見せ方を考えながら、観客を最後まで引きつけられるキャラクターにしていくことに次第に興味が湧いた」「20代、30代の私は特に“動き”のある役が多かったので、小夜子のようにミステリアスで物静かな役でのオファーが意外だった」と、今回の役を振り返っている。
この言葉通り、今回の柴咲コウの役柄は何を考えているのかわからない、特に序盤は拉致監禁という犯罪に協力する理由が判然としないのだが、だからこそ「彼女の目的や本心はどこにあるのか」という疑問が物語をけん引していた。
その柴咲コウは『バトル・ロワイアル』(2000)では恐ろしい残虐性を持つ少女を演じていたことや、『喰女-クイメ-』(2014)では美しさの裏にある狂気を感じさせる女性に扮していたこともある。
そのような怖い役柄を演じた柴咲コウのキャリアの中でも、なるほど今回はもっとも落ち着いた役とも言える。そして、「他人を自分の心に入り込ませない」冷たい印象もまた柴咲コウは体現できるし、その目的や本心がふとしたときに「垣間見える」演技の上手さにも感服したし、その上でやはり恐怖を覚えたのだ。
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