【第6週】満智は男女不平等社会が生んだ「悪女」? 

 先週の内容には、寅子が岡本玲さん演じる満智という被害者ヅラの悪女のクライアントにコロッと騙され、協力させられてしまうという「失態」もありましたが、ああいうことを三淵さんが経験したわけではありません。つまり、すべては脚本家の吉田恵里香さんの「創造」だと思われますが、かなりうまく描けていましたね。

 「女が生き抜くには悪知恵も必要」と言って憚らないドラマの満智を見ていると、男性よりも女性の権利が認められていない時代には、女性が男性と同じ罪を犯したところで、軽い罰しか受けなくて済んだという事実を思い出さずにはいられませんでした。

 たとえば、三淵さんが明治大学法学部に入学した翌年にあたる昭和11年(1936年)、阿部定が愛人男性を荒川の待合(現在のラブホテル)で殺害し、その局部を切り取った猟奇殺人事件を起こしているのですが、裁判での彼女は「独占欲から彼を殺害した」と発言し、反省らしい反省など示しませんでした。また、検察は刑期10年を要求したにもかかわらず、下りたのは「わずか」懲役6年の判決だったのです。

 既婚女性を「無能力者」とする法律、そして男性よりも相対的に女性を軽く扱う法律などは、19世紀後半の欧米諸国でも当たり前のように存在していたのですが、1889年(日本では明治22年)、フランスのリヨンの森でトランクに男性の遺体が詰め込まれているのが発見される事件がありました。

 被害者はパリから失踪していた執達吏(裁判所職員)のオーギュスタン・グッフェ氏で、捜査の結果、殺人に加担したのは破産した実業家のミシェル・エローと、彼の愛人で、高級娼婦のガブリエル・ボンパールで、金欲しさゆえの犯行だったとわかりました。

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