◆「神様や運命」で伝えることに葛藤があった理由

TBSテレビ報道局の久保田智子さん
――ご自身は葛藤があるとおっしゃっていましたね。

久保田:縁や運命などのおかげとすると、なんだか娘との出会いと本当の意味では向き合えていないような気がして。考えすぎだとよく言われるのですが、そこを本音でちゃんと話したいなっていう気持ちがすごく強くあるんです。

――なぜでしょうか?

久保田:子どものために言わない方がいい、子どものためならなんとなく表現を曖昧にしてもいいよねっていうことが、わたしは子どものときにすごく嫌だったんですよね。

わたしが思っていることをそのまま娘に押し付けるのは良くないとは思いながらも、やっぱりきちんと言葉で説明できるように、自分の中での整理はきちんとつけて伝えたいと考えていました。

――そういった思いから、生みのお母さんや家族のこれまでを写真で見せながら伝えることにしたんですね。撮影から時間が経った今、生活の中であのアルバムを開いたりする場面はありますか?

久保田:あります。でもこちらから見せるということはしていなくて、本棚においてあって、娘が見たいタイミングで見ているという感じです。実はいまは生みの母の話も積極的にはしていません。というのも、あっせん事業者の相談員の方から、「今はあまり言わないほうがいいと思います」とアドバイスをいただいたんです。

娘の成長の段階によって反応が変わることがあります。こちらの都合で話すのではなく、娘の状況に合わせて真実告知をしていくということもとても大切なんです。特別養子援組は成立以降もすごく大切で、相談員の方は子どもの成長に合わせて真実告知の仕方など、継続的に相談にのってもらっています。本当に長い付き合いになりますね。