このように、障害者や同性愛者など、一方的に「ムダ」とみなした存在を虐殺したのが、ナチス・ドイツである。しかし、ムダを追求していくと、世の中の人はほとんどがムダなのではないか。自然界から見れば、環境破壊を繰り返す人類だってムダな存在で、この星からいなくなっても何の不都合はないだろう。

 マツコがテレビに出始めた頃は毒舌がもてはやされたが、時代が変わり、今はお説教めいたことを言うことが難しくなっている。2022年放送の『マツコ&有吉かりそめ天国』(テレビ朝日系)では、「若い人に対して何か言うのは、本当に極力避けている」と時代の変化を意識しているような発言をしていたし、実際、近年は若者を否定するような発言はしていないと思う。

 けれど、やはり、ここぞというときは全国ネットでもガツンと言ってほしい。タイパ至上主義の若者の「ムダをなくしたい」という思いは、危険をはらんでいるから。「うまい」だけではないマツコのコメントを聞きたい人は、私だけではないはずだ。