◆娘を迎えたのは「家族全体がスタートラインに揃ってから」
――血の繋がらない子どもを迎えるにあたり、旦那さんやご両親とは、どういうお話をされたのでしょうか?
久保田:夫はパートナーとしてわたしにないものをたくさん持っていて、わたしが変わるきっかけを与えてくれた人なんです。子どもについても、私が子どもができにくいということで、一緒に考えていこうと言ってくれました。そういう意味で夫と出会って本当に良かったと思っています。
最初はわたしと夫のスピードが違って、夫はもうちょっとゆっくりと制度について考え、子どもを持つとはどういうことかについて考えたいと。でもわたしはだいぶ前から考えていたから、早く特別養子縁組ができたらいいなと思っていました。でも、どちらかの気持ちで強引に進めるというより、お互いに話をしながら考えていきました。
また、特別養子縁組をあっせんしてくれる団体の方からは「親戚のみなさんや、特に周りでサポートしてくれるであろう人たちには、きちんと特別養子縁組で子どもを迎えることを説明してください」と言われました。
なので、父や母にも話をするし、夫の両親はもう亡くなっているのですが、お兄さん家族にも話をしに行って、二人だけの問題ではなく、もっと大きな家族全体の合意の上で、スタートラインにみんなが揃った時点で、 迎えるという段階を踏みました。これは振り返るとすごく良かったです。迎える前から、何かあったら一緒にやりましょうと言ってくれる人たちが周りにいた。これはすごく心強かったですね。
――そして本作は「TBSドキュメンタリー映画祭2024」の一作としてお披露目されますが、映画祭での上映が決まったときはいかがでしたか?
久保田:早い段階から検討はしていたのですが、特別養子縁組をどう描けばいいのかなと思っていました。というのも、特別養子縁組のことを忘れて観ていただくと、普通の子育ての記録だと思うんですよね。
毎日一生懸命、子どもの世話をしているように見えると思うんです。ただ違うことと言えば、出会い方と真実告知をしていることかなと思いました。特に真実告知は特別養子縁組の制度を知ってもらう上でとても重要なところで、ある意味で制度のことが凝縮されているようにも思って、映画にして皆さんに伝わることがあるのではないかと感じました。
<取材・文/トキタタカシ 撮影/山川修一>
【トキタタカシ】
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。