◆「対話の大切さ」を伝えたい
――この作品には特別養子縁組制度やそれにまつわる家族の在り方など、いくつかテーマがあったと思いますが、監督としてはまず何を問いたかったでしょうか?
久保田:もちろん特別養子縁組の制度について知ってもらいたいという思いからはじまりました。でも面白い発見がありまして、映画を制作するというのは、自分の生活を俯瞰してみることになったんですね。そのことから、自分は人との関係性によって今の自分がつくられていて、自分も人に影響を与えているんだなと思いました。
映画の中でいうと、それは娘との関係性、夫との関係性、私を育ててくれた家族との関係性です。たとえばあの父母だからこそ、わたしのいまの性格があるのだなと思うし、自分が娘に何かを問いかけることも、おそらくひとつひとつが娘のあり様に影響を与えていくんだろうなって思うんですよね。
であれば、お互いにとっていい関係性でいるにはどうしたらいいのかも描きたいと思いました。私はそのためには、対話をすることが大切だと感じています。映画の中でも、父、母、夫、娘と、しっかり話すことを意識して描きました。身近な家族だからこそ、意識して話してみてほしい。勝手に思い込んでしまったり、誤解もをしたままにしてほしくない。自戒も込めて、対話の大切さを伝えたいと思いました。