「恋するフォーチュンクッキー」も、秋元康先生との間で何往復もやり取り

――最初はどのようなアイドルの振付を担当なさっていたのですか?

Q-TARO アイドルは、松浦亜弥さんの「午後の紅茶」(2003年~)のCMでアシスタントをやらせてもらったのが最初だと思います。 僕単独の名義では、KAT-TUNさんの「GREATEST JOURNEY」(2016年)という曲をやらせてもらったり、あとは嵐さんの、バラエティ番組内で踊りのあるコーナーを担当させてもらったり……でしょうか。

――では、どちらかというと男性アイドルを担当することが多いのでしょうか?

Q-TARO いや、そんなことはない(笑)。僕名義だとむしろ、特にいまは女性のほうがが多いですね。いちばん長いのが「バンドじゃないもん」です。

――踊りを作るだけではなく、現場での振り入れやレッスンなども振付師の仕事なんでしょうか?

Q-TARO そう、そこなんですよね。「振付の仕事をしてる」って言うと、「へえ、あのダンス作ってるんだ。すごいねー」で終わっちゃうことも多い。でも、意外と仕事のプロセスは長くて、打ち合わせで伝えられたコンセプトを受けて、「こういうダンスはどうですか?」というやり取りが、発注元との間で何度もあります。先輩のパパイヤさんが担当した、AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」(2014年)も、パパイヤさんと秋元康先生との間で何往復もやり取りをしていますからね。そうしてやっとOKが出て決定したダンスを、今度はアイドル本人たちに確認してもらって、さらに何度かやり取りがあったあとに、ようやく振り移し(振付を実際に教えること)に入っていく。ここからは予算やスケジュール次第なのですが、お仕事としては振り移しをやって終わるパターンもあれば、その後の練習からライブ本番までを見届けることもあります。MV撮影の現場では、カメラワークによって踊りを多少調整することもありますし……それらの現場対応も全部ひっくるめて、「振付のお仕事」なんですよね。

ーーCMや児童系の振付とアイドルの振付とで、何か違いはあるのでしょうか?

Q-TARO いやもう、まったく違いますね! まず、児童系の振付は、実は制約が非常に多いんですよ。特に1~2歳児向けの振付は、怪我をしたり目が回ったりしないように……と、ターンを入れられません。ほかにも、指差しの振りがあってもカメラを指すのはNGとか、文化圏によってはネガティブな意味になるからサムズアップを入れてはいけないとか、そういった制約が多いので、できる動きの幅が結構狭いんです。簡単な振付でなければいけないけど、作る側にとってはすごく難しいんですよね。そういう意味では、相手はオトナであるアイドルの振りの仕事のほうが自由度は高いので、楽だったりしますね。