世界的にはキャッシュレス化が主流
そもそも世界的にみるとキャッシュレス化はどんどん進んでいる。
筆者の知人にアメリカ人トレーダーがいる。彼の年収は数千万、まぎれもない富裕層である。だが彼は財布にこだわりなど持っていない。アメリカはカード社会であり、どこのお店でもカードが使用できるから、お金を持ち歩く必要がなく、こだわりの財布などを持つ必然性がないのだ。彼はジャラジャラとたくさんの小銭をこだわりの財布に入れて残金を把握する、なんていうことはしていない。いわく「お金持ちになりたければ、大きな額を慎重に見ることに注力するべきであり、小銭のような少額に気を囚われるのはムダだ」とのことだ。また、「大金を持ち歩くとリスクでしかない。お金は落としたら戻ってこないけど、カードなら止めれば損失はないない」と言っていた。極めて合理的な思考である。
キャッシュレス化はアメリカだけではない。お隣中国は日本より遥かにキャッシュレス社会を実現させている。知人の富裕層の中国人は基本的に財布を持たない。その理由をこう話す。「中国ではお金は”物理的に汚い”と見ている人が多い。ボロボロだし、血液のようなものが付着していたり、偽札もあったりする。13億人で偽札ババ抜きをしているようなものだから、可能な限りキャッシュを持たないことがリスクヘッジになる」と。日本のホームレスは小銭を入れるボールを前に置いていることがあるが、中国の場合はホームレスもQRコードの札を下げているなど、徹底したキャッシュレス化を実現させているのだ。それは観光客をみても分かる。比較的お金を持っている中国人が日本へ観光にやってきているわけだが、彼らの中には手ぶらに近い人もいる。クレジットカードはもちろん、近年ではビットコイン決済などを利用する中国人もいるので、スマホだけという人もいるほどだ。
世界的に見てキャッシュレス化は促進されており、現金主義は日本のガラパゴス現象と言っても過言ではないのである。
「お金持ちは長財布」の真相
このように「お金持ちはシーンによって長財布や、二つ折り、コインケースやマネークリップを使い分ける「合理主義」が多い」というのが冒頭の問いに対する筆者の答えだ。長財布を使っているお金持ちは、「長財布(二つ折り)はお金が快適に過ごせる空間である」といったジンクスに従って動いているのではなく、お金持ちになる要素を持った人が、たまたま掴んだ先が長財布だっただけというだけに過ぎない。もちろん中には長財布を持ち始めたときからビジネスが上向きになったことで、ゲン担ぎで長財布を使っている富裕層もいるだろう。しかし、それはあくまでその人がそうしたスタイルで動いているだけという話なのである。
「お金持ちが長財布」というのは単なる面白いブームだったように思う。時代はどんどんキャッシュレス化に移っている。お金持ちに一歩近づくためには、おまじないまがいの話を信じるのではなく、合理主義的な思考をマネた方が良いのではないだろうか。
文・黒坂岳央(高級フルーツギフトショップ「水菓子肥後庵」代表)/ZUU online
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