ここでハルトのモノローグを入れるということは、ドラマの視点を180度転回するという意味になります。この視点の切り替えの手法は、人物Aの視点で描かれてきたドラマが、実は人物Bからはこう見えていた、という、具体的にはちょっとすごくマイナーな作品しか思い浮かばないけれど、例えば吉田恵輔監督の『机のなかみ』(07)で使われたように「登場人物の本心」を描くためにしばしば採用されます。『机のなかみ』なら「あべこうじは鈴木美生が自分に気があると思ってたけど、鈴木美生は全然そんなこと思ってなかった」とか。

 ここに至って『366日』はそんなダイナミックなことをやるのか、実はハルトは早い段階から目覚めていて、意図を持って記憶を失ったフリをしているだけだったのか。このタイミングで、しかも冒頭から視点の切り替えが行われたことで、そういう期待がふくらむわけです。

 いや、ウソです。期待はふくらんでないわ。この保守の権化みたいなドラマがそんなトリッキーなことするわけない。

 結果、単に「ハルトの記憶は昔の分は戻ったけど、最近のは戻ってない」という情報を手っ取り早く伝えるだけの段取りでしたね。これシナリオ的には反則ですけどね。

 というわけで、13日放送分の第6話です。振り返りましょう。