結局、紗耶は寸前でお偉いさんを柔道部仕込みの締め技で失神させて事なきを得ました。なんでそこまでするのかと訝しがる海斗くんに、紗耶は「アナタガスキダカラ」とキッス。この一連、ドラマとしては海斗くんが周囲からも愛される、情熱あふれる好人物だという印象を与える意図があったかと思いますが、逆に彼の鈍感さと無能さが浮き彫りになる結果となっていました。

 ほかにも、海斗くんの元カノである陽月ちゃんが妹の手術代を稼ぐために高級クラブで働き、太客とネンゴロになって大金を出してもらったことを示唆するくだりがあったり、「若くてきれいな女が体を使っておじさんから金を引っ張る」という構図を、まるでその女の子たちが「健気で献身的だ」というニュアンスで伝えてくるのが、すごく嫌な感じでした。

 倫理的に嫌だということより、「欲望の果てに」なんて大仰なタイトルを打っておいて、こういうおじさんのシンプル肉欲を本筋の要素として取り扱うことで、物語のスケールが小さくなるんです。本来、成熟した大人たちによる権力争いを描きたいはずなのに、「誰でもいいから後先考えずに若い女を抱きたい」というおじさんが2人も出てくると、世界観として提示してきた重厚さが薄れてしまう。そういう一貫性のなさが嫌なんです。