生命保険には「貯蓄性」がある。これは生命保険を活用して資産活用をすることに肯定的な人も、否定的な人も認める事実だ。一般的に生命保険のイメージは病気や怪我に対する「保障性」といわれているが、一方の貯蓄性にもとづいて生命保険の商品を選ぶとき、目安となるのが保険の持つ「返戻率」だ。

返戻率の算出要件に注目して自分に当てはめる

返戻率とは、一定期間にわたって加入している生命保険を解約したときに、戻ってくる金額(解約返戻金)が、それまでに払い込んだ金額(払込総額)と比べたものだ。両者が同じ金額なら、返戻率は100%となる。貯蓄性の保険は平均して105%~110%の返戻率が設定されており、保険加入者は保険選びの基準として、この返戻率を見て判断する。当然、返戻率は商品のパンフレットなどを通じて、保険会社が算出しているものだ。

ところが、この返戻率に「トリック」がある場合も多い。この場合とのトリックとは、パンフレットを見ている加入者とは明らかに異なる算出要件で返戻率が算出されているケースだ。

返戻率が高くなる条件

返戻率110%が確保できる!と勇んで保険に入っても、実際は元本割れをするかどうかの推移状況。そんな時は、いくつかの「返戻率が高くなる条件」が機能している。

(1)保険料の払込期間

保険を5年で払い込む場合と、10年で払い込む場合は、年ごとの元本払込料が異なる。5年で払い込んだあと、5年間据え置くと、10年で払い込んだ場合と保険金受取時期は変わらない。後者は払込分母が10年分なので、返戻「額」となれば10年払込が当然高くなるのだが、返戻「率」のみピックアップしている商品には気をつけたい。

(2)死亡保険金額が小さい

まず基本的な仕組みを確認する。解約返戻金は払込保険料総額と比較するが、この金額が丸ごと返ってくる仕組みではない。

払込保険料総額=(生前保険金+運用益)① + 付加保険料 ② + 死亡保障 ③

②は掛け捨て部分のため、③は死亡した加入者のみが受けられる部分のため戻ってこない。①の生前保険金に加え、運用益として②と③の分を①の「運用益」で担保する、という仕組みになっている。

この公式を見ると、③の死亡保障の額が減ると、運用益として確保する額も比例して減り、解約返戻金が高くなる、という構図だ。解約返戻金に着眼して保険を検討する場合、死亡保障を気にしない人も多いが、同時に留意するようにしたい。 

保険商品のなかには、キャッチ―で判断しやすい「解約返戻率」が大々的に告知され、それ以外の数字は一回りも二回りも小さな文字で要綱に記載されている、というものが少なくはない。本来、判断基準となる情報をまずは拾い上げることが重要だ。

生命保険は「全体」を見て選ぶ

このように、解約返戻金〇〇%と宣伝している保険も、返戻率「だけ」で選ぶのではなく、払込期間や死亡保障といった保険「全体」を見て加入検討することが重要だ。言い換えると、貯蓄目的で保険を検討する場合も、付帯する「保障性」を見たうえで判断することが大切だ。

また、資産活用として貯蓄用の保険を検討するのがベストなのかを合わせて考えたい。保険「ありき」で考えるのではなく、資産活用の一手段として考えることが重要になる。保険料を預貯金と比較すると、簡単には(解約しないと)戻ってこない一方、何かあったときに充当したい貯蓄としては適さない部分もある。預貯金も確保しつつ、長期的な貯蓄として生命保険を検討するという貯蓄のポートフォリオの組み立てが大切だ。

資産活用のポートフォリオは「複数の手段」を取ること

実際に資産運用を始めると、思いのほか「考え直し」のタイミングが多いことに気がつく。生命保険であれば保険の見直しや転換保険がそれにあたる。時勢の変化が活発になり、昨日最も推奨されていた資産活用方法が「少し古い」になるまで、さほど時間を必要としなくなってきた。大切なのは、自分にとって相性の良い、「参謀」を付けることによって、その情報を逐一ピックアップできるようにすること。PBやFPなどの専門家でもいいし、掲載情報が良質ならば、インターネットのメディアでもいいだろう。

それらの情報から、資産活用の原資の一部を〇〇に充てて、一部を△△に充てるという、複数の手段による「ポートフォリオの構築」が必要になる。そのなかに貯蓄型の生命保険を組み入れ、メリットを活用するようにしていきたい。

文・工藤 崇(FP-MYS代表取締役社長CEO、ファイナンシャルプランナー)/ZUU online

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