◆中村蒼の使命とは
テレビドラマ初主演作は、『BOYSエステ』(テレビ東京、2007年)。ジュノンボーイ出身のイケメン俳優にはお決まりのコースとして、無邪気にイケメンを消費するかのようなキワモノ作品にも出演している。若手を売り出す常と理解すべきだろう。
でもイケメンが消費されても、中村蒼自体は決して消費されない。なにせ、彼には使命があるのだから。『東京難民』の冒頭場面が忘れがたい。大学生の時枝修(中村蒼)が、加え煙草で郵便を受け取る。
扉が閉まる瞬間、煙が吹かれ、玄関に充満する空気感がやけに生々しい。煙をまとう修が大学に行く。出席確認のために学生証をタッチするが、ハネられてしまう。
学生課に確認してもらうと、学費の未納で、除籍になっているという。そんな事情聞いてない。平凡な大学生の日常が、この瞬間に崩れる。大学生という役柄を超えて、社会の片隅のリアルを中村が一身に引き受けているかのような力強さがあった。
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