米国を代表する高級スーパーのWhole Foodsは2022年3月に、ユニオン・スクエア近くに旗艦店をオープンした。近くにはハイテク産業で働く高所得層が多く住む。新店には新型コロナ後のリバウンド需要を獲得する狙いがあった。ところが開店直後から、店内では想像を絶する混乱が続いた。

 店舗を訪れた男たちが従業員を銃やナイフなどで脅し、騒ぎながら商品を奪って床にまき散らすことが日常的にあった。店内でのけんかは当たり前。食品棚の前の床に糞尿をしようとする男たちもいた。店舗のガードマンをナイフで襲った男が、その後、従業員に向けて消火器を噴霧したこともあった。

 9月には、30歳の男性が店内のトイレで死亡しているのが見つかった。鎮痛剤として使われるフェンタニルと強力なオピオイド、メタンフェタミン(覚醒剤)を過剰摂取したことが死因だった。

 Whole Foodsは、このままでは客や従業員の安全を確保できないとして、2023年4月にこの旗艦店を閉めた。営業期間はわずか1年1カ月。極めて異例の短さで、店内の混乱がいかに深刻だったかを物語っている。