◆勝ち負けにこだわる新名夫妻と、我が道を行く陽一

 みちが歩いていると、偶然「待ってよ、泥棒猫」と呼び止められる。楓である。

 ふたりは立ち飲み屋で飲み始め、ついには楓がみちを陽一の店に連れていく。そこには誠が「決着をつけるため」に来ていた。

 コイントスで勝手に順番を決める誠。みちへの愛を口にし、陽一にも何か言うように仕向けるが、陽一はなにも言わない。「あなたの負けですね」と誠は言うが、陽一は「うん」と素直に受け入れる。彼は勝ち負けを決めることをよしとしていない。楓は「はい、どっちも負け」と告げる。

 誠と楓は、仕事においても勝ち負けにこだわって生きてきた。善し悪しの問題ではなく、そういう生き方しかできなかった。みちも、今やその世界で生きようとしている。だが、陽一だけは違う。相変わらず「我が道を行く」だけ。