ニュースや新聞を見ると、景気は後退していると感じられるにもかかわらず、コロナ禍によって株価は急落したあと急速に回復しています。その理由は、どこにあるのでしょうか?株価が回復している要因をもとに、ビジネスパーソンなら知っておきたい景気と株価の関係について紐解いてみましょう。

不景気でも株価は上昇?

まずは、2020年になってから日経平均株価がどのように推移してきたか、これまでの動きを簡単に復習しておきましょう。

コロナショック前後の日経平均株価の推移

2020年に入ってから各月の日経平均株価の終値は、下記のように推移してきました。

2020年1月 2万3,205円
2020年2月 2万1,142円
2020年3月 1万8,917円
2020年4月 2万193円
2020年5月 2万1,877円
2020年6月 2万2,288円
2020年7月 2万1,710円
2020年8月 2万3,139円
*小数点以下切り捨て

3月末は2割減、しかしその後は順調に回復

2020年3月中には、コロナショックの影響で日経平均株価は1万6,358円の安値を付けました。2020年1月中の高値2万3,995円に比較して、約3割以上値下がりしています。

しかし、その後は順調に回復。2020年8月末現在、コロナショック以前の水準まで株価がほぼ回復したと言えそうです。投資家やアナリストも、見事なV字回復をとげたとコメントしています。

なぜ、株価は上昇しているのか?

ニュースや新聞では、コロナショックの深刻な影響が報じられています。帝国データバンクによると、新型コロナウイルス関連倒産は全国で495件(2020年9月7日16時現在)。業績の先行きが見えない状況から、2020年の夏はボーナスカットも相次ぎました。

このような状況にもかかわらず、なぜ株価は上昇しているのでしょうか?続いては、株価が上昇する理由を、3つの観点から解説します。

自律反発で戻った

1つ目は、「自律反発(リバウンド)で戻った」という見方です。自律反発とは、急速に相場が下がったあと、自然と相場が戻ることを指す証券用語です。

自律反発が起こる要因として、たとえば底値が近いと判断した投資家が、買いを増やすことなどが挙げられます。ほかにも、いくつかの投資家の行動が影響し、自律反発が起こると考えられています。

今回のコロナショックでも「もう底値だろう」と考えた投資家の警戒心が解け、買いが増えたことから、自然と相場が戻ったとも考えられます。

中央銀行が異次元の金融緩和を実施

日経平均株価がコロナショック後も2万円台を保っている理由について、日本の中央銀行である日銀が、異次元の金融緩和を行っていることを指摘する声もあります。

コロナショック以降、日銀のETF買いは増加しました。外国人投資家が日本株を売り、日銀が日本株を買うという流れが加速しています。これによって、日経平均株価が保たれているというのです。

しかし、購入したETFが下落すれば、日銀は大きな含み損を抱えることに。また、いつまでも買い続けられるかというと、そうではありません。日銀が買い増しできなくなったタイミングで、暴落の可能性があると危ぶむ声もあり、これからも相場状況からは目が離せません。

アフターコロナを折り込みはじめている

また、コロナ対策への期待感の高まりが、株価に影響しているという見方もあります。世界中の研究機関が急ピッチでワクチンの開発に取り組んだことから、ニュースでもワクチンに関する最新動向を耳にすることが増えてきました。

アメリカはワクチンの緊急使用許可を出すことも検討しており、ワクチンによって感染拡大に歯止めがかかれば、経済は一気に持ち直すという見方があります。

同時にコロナショックがきっかけとなって、これまでも必要性が叫ばれていたイノベーションを加速させようとしている、とする見方もあります。日本でも、コロナショックによって、多くの企業がテレワークを導入し、働き方改革が期せずして前進する形になりました。

ITツールの導入やWeb会議ツールの浸透も、今後の日本経済の発展を後押しするかもしれません。こういったアフターコロナへの強い期待感が、株価を押し上げている可能性があります。