■塩梅、いいと思います。おもしろかった。

 まず心配になったのが、災害現場に入ったばかりの助手・雲田を連れていくということでした。それは上司の命令だから仕方ないとしても、私服のままヘリに乗せるんですね。現地に着いても、パンプスで雪山を歩かせてる。この時点で、雲田が足手まといになるという伏線を張っているのかなと思ってしまうんです。

 第1話ですし、「SDM」という組織の実力というか、ホントにこんな組織が必要なのかという問いに強烈な答えを返さなきゃいけないところで、失敗の伏線を張っているように見えた。よくないなぁ、と感じていました。

 現場では、ハルカンが天才的な計算能力で雪の降る場所や量、次の雪崩ポイントなどを正確に弾き出し、救出に向かった消防隊を誘導します。このへんは見ている側としては、どんな計算でその答えが出てるのかなんてわかるわけないので、山Pの顔面の説得力に身を任せるしかない。だから、その能力だけでいろいろ奇跡が起きて成功しちゃうと興ざめになるところです。

「奇跡は待つものじゃない、準備するものだ」

 救助活動が行き詰まったころ、ハルカンがこんなことを言うんですね。ハルカンが2頭身キャラになって笑顔を振りまいている防災パンフレットには、「雪崩が起きたら下ではなく横に逃げろ」「くぼみに入れ」「埋まったら手で口の周りに空間を作って呼吸を確保せよ」と書いてある。そう書いてあるパンフレットが、日本中にばらまかれている。もし遭難者がそれを読んで、知識として知っていたら、生きている可能性があるかもしれない。

 ここで、ハルカンがテレビで愛想を振りまいている理由が明らかになります。災害に対しては日ごろの準備が大切であり、防災情報を届けるための広告塔としてテレビに出ていた。「人の命を救うことに取りつかれている」人間としての、一貫した行動だったことがわかるわけです。

 届いていれば、奇跡は起こる。その場だけでいくら天才的な能力を発揮していても、遭難者が防災パンフを呼んでいなければ、死んでいる。いい塩梅だなぁと感じるところです。この奇跡なら信じていいと思える設定を『ブルーモーメント』第1話は用意してきました。お見事。