ドラマの源倫子(黒木華さん)がかわいがっている小麻呂という猫も、もともとは遣唐使が中国から日本に連れて帰った猫たちの子孫なのかもしれません。一説に、中国から貴重な経典を日本まで運ぶ船旅において、ネズミたちが悪さをしないように猫を飼う風習が遣唐使たちにはあったそうですね。

 唐がついに滅亡するのが延喜7年(907年)。さらに遣唐使廃止後、日本と諸外国の窓口になっていた渤海という、中国東北部から朝鮮半島北部あたりにあった国まで滅亡するのが延長5年(927年)です。

 渤海を滅ぼした契丹という国とは表立った交流がほとんどなく、奈良時代には盛んに交流していた新羅なども、平安時代には関係が悪化、疎遠になったまま、承平5年(935年)に滅亡しました。

 日本史では江戸と平安の2つが鎖国の時代だったといわれますが、平安時代の鎖国は、諸外国との付き合いが疎遠になったり、途絶した結果、事実上の鎖国状態になったというニュアンスが強いのです。

 しかし、ドラマの直秀がいう「かの国との商い」もフィクションというわけではありません。彼のいう「かの国」とは、承平6年(936年)に朝鮮半島を統一した高麗(こうらい)を指すのではないかと思われます。『源氏物語』冒頭にも、高麗から訪れた使節が「高麗人(こまうど)」として描かれ、幼い光源氏の一行が、平安京における外国使節の宿所・鴻臚館(こうろかん)に滞在中の彼らを訪問するシーンがあります(『桐壺』)。高麗人は光源氏の人相を占い、「帝位につけば国が乱れる」などと将来を予言し、結果、光源氏は皇族から臣下の身分に下ったのでした。