これまた文春が追及してきた病院看護師の過酷な労働問題が、2月17日に衆議院予算委員会で取り上げられた。
だが、加藤勝信厚労相は、「情報を収集しながら、法の履行を図っていきたい」と寝ぼけたことをいうだけで、すぐに動こうとはしないようだ。
今週も文春は、国立病院の看護師たち101人の声を誌面に掲載して、厚労省はすぐに動くべきだと警鐘を鳴らしている。
独立行政法人国立病院機構(NHO)に所属する病院は全国で140あるという。中でも東京医療センターでは、今年度末までに看護師646人のうち106人、京都医療センターでは571人中89人が退職予定となっているそうだ。
なぜNHOの大量退職は止まらないのか。101人の声を集約すると3つの要因が浮かび上がったというのである。
1つは長時間労働の常態化だ。NHOの病院の多くは、看護師1人が入院患者7人を受け持つ「7対1看護配置」の認定を受けているという。重傷者の多い病院などが採用する人員配置基準で、2006年に設けられたが、この制度が長時間労働の温床になっているというのである。
「七対一看護の認定病院は、十対一や十三対一看護の病院に比べて国が定める診療報酬は高くなり、入院基本料も1ベッドあたり十対一に比べて一日約三千円アップする。例えば、六百八十八床を有する東京医療センターでは、八十%の病床稼働率とすると、年間約六億円も増収となるのだ」(文春)
退職者が続出する2つ目の要因として、妊娠・出産といったライフイベントに即した働き方が困難な点があるという。先週号の文春が報じたように、「妊婦も夜勤」「出産後の夜勤強要」などの実態には、私もとの声が次々と挙がっているそうだ。
さらに3つ目の要因として、人員の余裕のなさから現場で発生するパワハラも挙げられるという。
「人がいないんだから、親が死んだ時以外は休まないで」といわれていて、祖父の葬式にも行けなかったし、体調不良で院内で点滴を打ってから出勤することもあったと、東京医療センターの元看護師が話している。
とりわけ、看護師の中で当たり前のものとして扱われているのが「前残業の未払い」だという。
「担当していた看護師からの引き継ぎや、患者さんのデータを読み込む必要があり、大体三十~四十五分ほどを要します。しかし、勤務時間には組み込まれておらず、ほとんどの看護師が自主的に早めに来て行っている。給与は十年以上の間、一度も払われたことがありません」(東京医療センター看護師)。この給与というのは残業代のことだろうが、過酷な上に残業代も払わないという現状は、もはやこれらの病院はブラックといってもいいのではないか。