◆「真白」という役名

 時代は下って、鎌倉時代に成立した『平家物語』から、名高い「敦盛の最期」を引用しておきたい。「顔に薄化粧をしてお歯黒をつけた、わが子小次郎ぐらいの年配にあたる十六、七の美少年である」(中山義秀訳)とあり、男性貴族の美しさが白さに結実していることがわかる。

 中学、高校の古文の授業でも頻出するこの箇所を読むたび、それはそれは美しかったんだろうなと思いながら、現代なら誰似だっただろうかと、敦盛に町田啓太を重ねてみることがある。町田は単に肌の白さだけでなく、白さを象徴する俳優でもあるからだ。

 2016年のドラマ『スミカスミレ 45歳若返った女』(テレビ朝日)で町田が演じたのが、真白(ましろ)勇征という大学生。「真白」という役名が象徴する美しい響きが、そのまま公任役の通奏低音になっていると筆者は解釈している。