◆内面世界も豊かな公任
どうも役柄そっちのけで、単なる町田君びいきになってきた。一度、深呼吸。ビジュアルの議論から今度は内面的な部分へ注力してみる。『光る君へ』第7回、妻の桐子(中島亜梨沙)にぐちぐち愚痴る実資を秋山が愛嬌たっぷり演じる。
桐子は「くどい」といって日記に書いたらどうかとしきりに促す。実資は『小右記』という日記を残している。「この世をば……」ではじまる藤原道長の有名な「望月」の歌は、実は道長の日記『御堂関白記』ではなく、この『小右記』に記述がある。
宴席で披露された同歌に対しての唱和を求めた道長に対して、実資はうまくかわしている。博識でありながらも知識をひけらかさない実直な性格については、『紫式部日記』でも高評価である。
でも博識というなら、公任は折り紙つきだ。趣深い歌風で知られる名歌人だった公任は、漢詩、管弦、和歌(「三船の才」)に優れた人。関白の息子という身分だけでなく教養も桁外れだった公任が、モテたのなんのって。
こうなると俄然、公任びきいまで始まってしまうのだが、今でいえばベストヒット歌謡アルバムみたいな『和漢朗詠集』を編纂した公任が、竜笛を吹く場面で町田は、指先まで雅な美しさをめぐらしている。透明感ある白さの外面だけでなく、内面世界も豊かな公任にやっぱりイケメン軍配をあげるべきかしら。
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