チームギンクラのターニングポイントは必ず佐藤が絡んでいた。大きなターニングポイントは2つあり一つ目は大きな舞台で芝居をやるということ。佐藤は誰よりも劇団員のことを考えており、素人同然のこのメンバーを、現状では立つことが出来ない大きな舞台で芝居をさせたいと結成当初から考えていた。

 僕はどこか夢物語でその話を聞いていたのだが、5回目の本公演の際、僕たちはその夢を叶えることが出来たのだ。その場所は池袋にあるシアターグリーンという劇場にある最も大きな「BIG TREE THEATER」で、キャパは167席。もちろん帝国劇場などの大きな劇場に比べれば微々たるものだが、小劇場の中では圧倒的な大きさで、たった5人の小さな劇団からしたら途方もない席数なのだ。

 もちろんその分、使用料も高い。だが佐藤はその劇場を押さえたのだ。これだけ聞くと無謀な感じがするかもしれないが、佐藤は小劇場の中では大きいと言われる劇場を人知れずチェックし続け、何かしらの事情により安くなった「BIG TREE THEATER」の使用料を見つけ、興奮気味で僕に報告してきたのだ。正直僕は値段ではなく、キャパ数が多い事により集客が困難になると想像でき、これは無謀な判断ではないかと佐藤に伝えた。すると佐藤はこんなチャンスは滅多にない。夢を叶えるのはこのタイミングしかなく、集客は死に物狂いでやります。だからお願いします。と懇願してきたのだ。

 僕はその佐藤の熱意におされ承諾した。終演後には佐藤が言った通り満足いく作品になり集客もそれぞれの役者が新記録を出し、間違いなくチームギンクラの価値が高まる結果となったのだ。