佐藤はうちの劇団の初期メンバーで、彼女がいなければ劇団として成り立たなかったのは間違いなく、劇団を支え続けてくれた人物である。仕事の面ではしっかりしているのだが、仕事外の部分ではところどころ抜けているところがあり、彼女がこぼしたコーヒーの量は間違いなく10リットルは越えるだろう。

 佐藤との出会いは今から約10年前、劇団旗揚げまで遡る。当時の佐藤はそこまでメディア等での活動はしておらず、舞台も数えるほどしか出演していなかった。しかしチームギンクラの初期メンバーであり、旗揚げに対しては僕よりも情熱を持ち、命がけで劇団を支えてくれた。

 ほぼ素人たちが集まった劇団だったので、チケット自体も売れるかどうか不安な状況だったのだが、佐藤は誰よりも努力し、そして誰よりも多くチケットを販売してくれた。さらに「次の公演はどうするか?」「次の劇場はどこにするか?」「何人ぐらいのキャパなら埋められるか?」「どのようなペースで舞台をするか?」などプロデューサーとしての役割も担ってくれた。

 彼女の先を見る目は正しく、時に主宰の僕とぶつかることもあったが、間違いなく彼女がいなければチームギンクラという劇団は11回も公演することは出来なかっただろう。