大谷は、松井秀喜が結婚した時、彼女を表に出さなかったケースを研究していたといわれている。どうだったのか。

 メジャーリーグで当時、日本人初の球団広報として松井秀喜を担当した江戸川大学教授の広岡勲はこう話す。

「あの時の会見では、できる限り松井の言葉で答えてもらうようセッティングしました。メジャーでは、取材される側の義務と、する側の権利が規定されており、取材を拒むことはできない。隠し通すのは得策ではないし、スポーツ選手は、自分がいかに競技に打ち込める環境を作るかが最も重要。そもそも結婚は相手あってのことですから、パートナーへの思いやりを第一に、バッシングを防ぐ対応が著名人には求められるわけで、結果的に世界中から祝福された大谷くんの対応は見事でした」

 私は、大谷が当初、日本人女性としかいわず、無断で親族への取材をしないように付け加えたため、これはやばいかもしれないと思ったが、シーズン最初の韓国での試合に、彼女を伴い、写真を撮らせたのはよかったと思った。

 これには、大谷の対応を心配したドジャース側が、大谷に進言したのではないかと考えている。彼の妻の名前を公表したのもドジャースだった。

 ここまでは大谷の計算したものだとしても、予想外に熱狂を以て迎え入れられた。

 だが、同じころ、大谷にとってはこれまでの人生で最も難しい“事件”が起きていたのである。