◆父から“寵愛”されていた家定、その“寵愛”の意味とは……

将軍職も家慶から男子へと継がるのが時代の流れというもの。だが次の将軍には娘の家定(愛希れいか)が指名されていた。挨拶に出向いた正弘は、かつて家康公の身代わりを務めた阿部家の忠義を知っていた家定に感銘を受けるが、そこから家定に事あるごとに呼ばれては、一緒にお菓子作りに精を出す日々が続くことに(史実の家定もお菓子作りが趣味だった)。

手作りの菓子をふたりでつつく姿は、さながら女子会のようで、こんなとこりにも男女逆転の妙が生きてくるのかとほほえましくなったものの、家定が執拗に女性の正弘を呼びつけるのには意味があった。

家定が次期将軍とされていることを、皆は「将軍は家定様を“寵愛”している」と言葉にしていたが、事実はそんなものではなかった。家慶は自分の娘を性的虐待し続けてきたのだ。一度迎えた家定の正室は急死。

これも家慶による毒殺だと噂されていた。すべてを理解した正弘は家定を救うために「勇ましく、知恵も働き、女に優しい」適任者として瀧山を大奥へと身請けする。さらに家慶の父・家斉の正室であった広大院(蓮佛美沙子)の助けも借りて、家定のための奥を用意して見せたのだった。