■昭和あるあるでご機嫌をうかがわれた

 クドカンも阿部サダヲも、1970年生まれ。このドラマが扱う86年は高校生ですね。実に楽しそうに「昭和あるある」が繰り出されます。

 中学野球部の顧問であるオガワ(阿部)は、練習中に生徒を罵倒し、気を抜けばウサギ跳びをさせ、練習中に水を飲んではいけないと信じ込んでいる。職員室でも教室でもバスの中でも平気でタバコを吸うし、同僚の女性教師にセクハラ発言もする。女性教師もにこやかに応じる。

 一方で、家に帰れば女子高生の娘がいる。娘はどうやら、すぐに男を家に連れ込むようだ。オガワはいつも、早く家に帰らないと「娘がニャンニャンしちゃう!」と言って駆けずり回っている。娘のほうは一目惚れされた中学生男子をお持ち帰りしている。

 1977年生まれの筆者は当時小学校5年生だが、確かに職員室のデスクには灰皿があったし、駅のホームにもあった。大人がホームから線路にポイポイ吸い殻を投げていた風景も覚えている。AXIAのメタルテープとか、『シェイプアップ乱』とか、琴線に触れるガジェットも少なくない。いい感じでご機嫌を取られる風景ではある。

 そんなオガワの乗ったバスが令和にタイムスリップしてしまう。最後列で普通にタバコを吸っているオガワは奇異の目を向けられ、老人から「副流煙」という知らない単語を浴びせかけられ、逆上する。同乗していたミニスカ女子高生に「パンツ見えそうなスカートはいて、痴漢してくださいって言ってるようなもんだぜ」と言い放つ。スマホ、IQOS、AirPods、さまざまなカルチャーギャップが描かれる。