◆逃れられない心情描写が、重たくも沁みる

「命」という難しいテーマに向き合う患者と患者の家族を、古田新太、泉ピン子、木野花、高橋惠子、きたろう、筒井真理子といった錚々(そうそう)たる俳優陣が演じ、作品の質を押し上げました。そして主演・岸井ゆきのが、療養病棟に勤めて2年となる看護師・辺見歩で患者を支え寄り添う姿を、受けの演技で繊細に表現。

お別れホスピタル(11)
沖田×華『お別れホスピタル(11)(ビッグコミックス)』(小学館)
なかでも特に印象的だったのは、第2話の高橋惠子です。肝臓がん末期の夫を、8年もの間自宅で介護してきた妻を演じていました。命令ばかりだった夫への複雑な感情を抱いたまま、夫はいよいよ苦しみが止まらず鎮静の薬を投与されることに。最後まで妻の名を叫び求める夫に、最期のケアをします。そして耳元でささやくのです。“衝撃のひと言”を。

それを耳にしてしまった岸野の表情も絶妙。「どう死ぬのか」、ひいては「どう生きるのか」という、逃れることのできない命題に向き合おうとする人たちの“心の変化”を丁寧に映し出した本作。沖田×華氏による原作は続いているので、ぜひドラマも続編を制作してほしいです。