さらに日下さんが気持ち悪かったのは、その画家になった彼女の絵が展示されている美術館を訪れたところです。彼女もすでに亡くなっているのですが、その遺作に自分と彼女が描かれているんですね。日差しを浴びて、手をつなぐ2人の後ろ姿。美しい絵です。その絵のタイトルは「ごめんなさい」。彼女もまた、激しい悔恨を胸に一生を過ごしたことを、日下さんはこのタイトルから知るわけです。それを見て、日下さんはこんなことを言うのです。
「ほんの少しだけ報われた気がします」
こっわ。この人、自分を捨てた女に対して、ずっと懺悔に苛まれて生きていくことを望んでたんだ。自分が苦しいから、おまえ絶対俺のこと忘れんなよ、ふざけんなよ、そう思って死んでいったんだ。俺のことはいいから誰かとどこかで幸せになってくれなんて、まったく思ってなかったんだ。
「私の人生は、今日この瞬間のためにあったのかもしれない」
復讐のために人生があったと言っている。最期の最期にこの女、俺に謝ってやんの。ざまぁみろ。そう言っている。そうなってくると、雨ちゃんに奇跡を提案した意味もだいぶ変わってきますけど大丈夫ですかね。誰だか知らない女の子に「おまえも俺と同じ苦しみを味わえ」と言っていたことになるけど。
それにしても、毎回よくこんなに気持ち悪いパターンを出せるなと逆に感心してしまいます。こんなシナリオ、書いてて心が痛くならないのかな。自己嫌悪に陥ったりしないのかな。
そんな風に思ってたんですが、そうでもないみたいだなということも今回わかりました。日下さんが画家の彼女の身代わりになって寝たきりになる前、脚本家を目指していたんだそうです。
このシナリオを書いている人にとって「脚本家」という職業が夢あふれる希望に満ちたステキな商売だというリアルタイムな告白ですよ。今現在、自分はステキなドラマを書いているという自慢ですよ。すげえ、いい根性してるわ。
(文=どらまっ子AKIちゃん)