その昔、あるところにひとりの母親がいました。ある日、幼い息子が火災に巻き込まれてしまい、その母親は火中に飛び込んだのでした。なんとか息子だけは助け出したものの、自身は一酸化炭素中毒で亡くなってしまいます。

 死後、20年がたったころでした。その母親は、大人になった息子が交通事故で瀕死の重傷を負ったことを知ります。もう息子も死んじゃうことが確定していましたが、どうやらその息子の命が助かる可能性があるようです。

 息子の命の代わりに、ほかの誰かの五感を奪うことができれば、息子は明日からも元気に生きていける。そんな奇跡があるらしい。息子に助かってほしい、そして願わくばもう一度息子に会いたい。そう強く願った母親は、同行者とともに“案内人”として現世に舞い降りることにしました。