■今回の「気持ち悪い」大賞は……

 毎回、「うわぁ、こういうところ気持ち悪いなぁ」と感じる人物がコロコロ変わるのも、このドラマの特徴です。

 前回の第8話は、雨ちゃんの五感を平気で奪わせていた太陽くんの母親の身勝手さがひどく気持ち悪かったし、その前の第7話は、いい大人なのに「花火職人を目指す高校時代の太陽くん」に執着する雨ちゃんが気持ち悪かった。

 第6話は自分の欲求を満たすために虐待サバイバーの雨ちゃんの目の前に加害者をサプライズ登場させた婆さん(余貴美子)が気持ち悪かったし、第5話では障害者施設で暮らす人たちを見て「あんな不幸な人になりたくない」と思って落ち込む雨ちゃんの差別意識が気持ち悪かった。第4話で雨ちゃんに頼まれたらどこにでも車を出す司さん(白洲迅)も気持ち悪かったよ。

 で、今回の第9話では、実際に雨ちゃんに「五感差し出し交渉」をした案内人・日下さん(斎藤工)が気持ち悪かった。

 この人、生前に自分も雨ちゃんと同じ立場になったことがあるんだそうです。好きな女性のために身代わりになって人生を棒に振りながら、その女性は「画家を目指す」と言って寝たきりになった日下さんを捨てたんだそうです。

 そうして、日下さんは何の希望も見いだせないまま人生を終えたのだと言います。

 えーとね、その話は今じゃなくて、第1話の「五感を差し出しますか?」のときにしてくださいよ。実際、誰かの身代わりになって犠牲を払うと、こういうことになるよ。希望を見いだせない人生になるよ。でも、このままだと太陽くんは死んじゃうんだ。どうする? そういう流れならまだフェアなんですが、そこらへんの説明責任を果たさずに、ただ「どうする?」ですからね。それ以外の選択肢がないと思い込ませているというのは、こういうところです。