文化的芳醇と十分な世帯収入
バーナデットの一家3人が住んでいるのは、シアトルにある古びてはいるが雰囲気のある一軒家だ。天才建築家の物件チョイスと内装アレンジだけに、間取りもインテリアも一味違う。ヴィンテージ風の装飾、ヴィクトリア風の照明、モダンなインダストリアルデザインのキッチン。壁などが所々傷んではいるが、遊び心満載の家。言ってみれば、文化的にとても豊かな住まいである。
バーナデットの夫・エルジーは一流IT企業勤務の高給取り。とはいえ元々CGアニメーターなので、四角四面のビジネスマンではない。クリエイティブでリベラルなナイスガイだ。間もなく中学を卒業する娘のビーは聡明で勇気と正義感にあふれ、母親であるバーナデットのことを愛し、尊敬し、大切な親友のように接している。家族の間に多少の波風は立つものの、あくまで「多少」の範囲内。関係性はすこぶる良好だ。
一家が日々の生活に「あくせく」している様子はない。文化的・知的に価値があると思えることには躊躇なくコストをかけられるだけの世帯収入が、彼らにはあるからだ。卒業後のビーを寄宿学校へ行かせられるだけの金がある。ビーのリクエストで「一家で南極ツアーに行ける」だけの金と時間的余裕がある。あくまで参考だが、東京発の船で回る南極ツアーの料金は――旅程にもよるが――安くても1人あたり7、80万円、高ければ300万円近くかかる。
ビーの視点に立つならば、彼女は「親ガチャ」に大当たりした勝ち組だ。圧倒的才能・知性・財力を備えた両親。文化的センスを健やかに育む家庭環境。豊かな文化資本。言うことなし。
そもそも一家の住むシアトルという街の文化度が高い。Amazon、マイクロソフト、スターバックスといった世界的企業はシアトルもしくはその周辺に集まっているし、子供たちの教育水準も申し分ない。物語上、鼻につく住民もいるにはいるが、基本的に住民の民度も高め安定。日本の街で言えば……いや、やめておこう。