◆ドナー側にもリスクがある

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――ドナー側にはリスクがあるのでしょうか?

茂田:日本では同性パートナーが子どもをもつことに関する法律がなく、妊娠・出産をしていないパートナーは子どもと法的親子関係を結ぶことはできません。

ドナーと事前に「精子提供者は生まれた子どもを認知しない」といった合意を書面上で交わしても、何かしらの理由で子どもが「認知の訴え(ドナーに対して法律上の親子関係を求める裁判手続き)」を起訴した場合、強制認知(男性が子どもの認知を拒否した場合でも、強制的に認知させること)の事態に陥ることもあります。

子どもを認知するということは、養育費の支払いや相続義務が発生します。なので、財産目当てではないことを踏まえたうえで、起こり得るリスクも話さなければなりません。私たちは手紙を書いたり、何度か会って話したりして、最終的にはドナーと合意書を交わしました。

――合意書は自分たちで作成しましたか?

長村:テンプレートが存在しないので、自分たちで一から作成しました。私が合意書の骨組みを考えて、相手が気になる箇所を足して……という作業を繰り返してつくりました。

ドナーが将来結婚したい、子育てを一緒にしたいと考えるようになったときなど、さまざまなことを想定しながら、お互いが一つずつの確認作業を行いました。

――先ほど認知の話がありましたが、知人のドナーの方は認知したのでしょうか?

長村:私たちの場合、認知はしていません。認知は子どもにとって悪い影響はないと思うのですが、パートナーがいながら認知すると関係性が複雑になってしまうので、ドナーはドナーとしての関係性を保つことを選びました。