「そもそも小誌が最初にA子さんに接触したのは今から三年半程前の二〇二〇年七月十八日のことだった。

 都内の弁護士事務所で、A子さんは取材に応じたもの、当時はまだ、松本から受けた被害を誌面で告発する勇気を持ち合わせていなかった。小誌もまた、裏取りの困難さやA子さん一人だけの証言では不安が残ることなどを鑑みて、すぐさま記事にすることを見送っていた」

という。

 文春は2022年3月に、映画監督の榊英雄氏の映画に出演した複数の女優が、性的行為を強要されていたことを報道し、それが皮切りとなり、映画界にはびこる性加害問題が明らかとなり、日本でも多くの#MeTooが叫ばれるようになったとしている。

 2月20日、文春が報じた、その榊監督が逮捕されたと報じられた。

〈俳優を目指した女性に性的暴行を加えたとして、警視庁は20日、映画監督でアルバイトの榊(さかき)英雄容疑者(53)=川崎市中原区=を準強姦(ごうかん)容疑で逮捕し、発表した。「冤罪(えんざい)です」と容疑を否認しているという。

 捜査1課によると、榊容疑者は2016年5月23日午後10~11時ごろ、東京都港区のマンションの一室で、演技指導をする名目で、俳優を目指していた当時20代の女性にわいせつな行為をした疑いがある〉(朝日新聞Digital2月20日 20時19分)

 文春の取材活動が綿密に行われている証拠である。

 文春は松本ケースでも、別の取材源から松本の携帯電話の番号を入手して、その番号がA子の知る松本の携帯電話と同一であることを確認している。

 また、A子が記憶していた当時の松本の髪の色や服装、彼女の証言内容に矛盾がないかを確認するため、過去のテレビ映像や新聞、雑誌の過去記事などを取り寄せて分析したという。

「加えて、松本と『スピードワゴン』の小沢一敬、放送作家Xとの関係性等も調査し、A子さんの証言にどれほどの信憑性があるのか、一つずつ確認していったのである。(中略)

 被害現場となった『グランドハイアット東京』のゲストルーム『グランドエグゼクティブスイートキング』の間取りを事前情報なしでA子さんに描いてもらい、その上で当該の部屋をA子さんと訪ね“実況見分”も行った」(文春)