■ベタな群像劇は終わり、ドラマはどこへでも行ける

 最終回みたいだと思った理由として、このドラマは群像劇として満足感の高いものだったんです。

 アンニュイなチェロ(佐藤緋美)にしても、天衣無縫な指揮者志望の女子高生(當真あみ)にしても、キャラ付けが絶妙な上にマエストロと関わりを持ち始めるきっかけのエピソードが秀逸でしたし、その分、印象も強烈だった。マエストロの導きによって変わっていく若者2人を見ているだけでも楽しかったんですよね。

 それにコンマス近藤さんも初回から粒立ちがありましたので、なんかあるだろうなということは感じさせていたし、フィルと潰そうとする市長(淵上泰史)にもラスボス感があった。市長に「音楽なんて意味あるんですか?」みたいなことを言われて、マエストロが激昂するシーンなんてあってもいいな、とか勝手に想像してたわけです。

 そうやって脇役たちが丁寧に描かれていたからこそ、こういう群像劇の展開はベタでいい、ベタだからこそいいと言っていたわけですが、それはここまで序章を見せるための作り込みだったのかもしれないとなると、なかなか剛腕な作り手だなと驚かされます。

 予告では、どうやらマエストロはドイツの楽団からオファーが届くようです。音楽への情熱を呼び覚まされたマエストロがどう決断するのか、再び家族と離れて音楽の道に没頭していくのか。

『さよならマエストロ』というタイトルが、ようやく動き出したわけです。ここまできれいに序章をまとめ上げれば、ドラマはどこへでも行ける。

 次回も楽しみです。

(文=どらまっ子AKIちゃん)